面接が構造として抱えている評価の誤認に関する話です。

先にお伝えしておくと、ハロー効果や中心化傾向といった、よくある認知バイアスの話ではありません。面接官がどれだけ気をつけていても起きてしまう、面接という場そのものに潜んでいる誤認の話です。私はこれを「誤認の落とし穴」と呼んでいて、大きく3つあると考えています。

評価の誤認とは

選考で応募者を評価するのは、入社後のパフォーマンスを予見するためです。ですので、評価を誤るということは、入社後のパフォーマンスの予見を誤るということでもあります。

面接では、面接官が質問し、応募者が答え、その答えを受けて面接官がまた質問する、というやりとりが言葉だけで繰り返されます。評価の材料になるのは、このやりとりの中で出てきたものだけです。

ここでは、ある企業の面接で次の3つの能力を評価するケースを考えてみます。どれも、入社後のパフォーマンスにつながることがわかっている能力だとします。

  • 話の筋道が通っていて、わかりやすい(話のわかりやすさ)
  • チームや組織の中で、協調性を発揮している(協調性)
  • 最後まであきらめずに、やり切ることができている(やり切る力)

落とし穴① 直接評価に引っ張られる

面接の評価には、目の前の発言や振る舞いから評価する直接評価と、応募者が話す過去のエピソードから評価する間接評価の2種類があります。3つの能力のうち、話のわかりやすさは面接の場で必ず見えるので直接評価です。協調性とやり切る力は面接の場では見えないので、ガクチカなどのエピソードを聞いて間接評価することになります。

直接評価と間接評価の違いや、評価要素ごとの見分け方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

ここに、AさんとBさんという2人の応募者がいるとします。仮に本当の能力というものを5段階で測れるとしたら、2人は次のような人です。

表1 2人の応募者の、本当の能力(仮定)
AさんBさん
話のわかりやすさ(直接評価)52
協調性(間接評価)24
やり切る力(間接評価)24
合計910

面接での2人の印象は、たとえば次のようなものです。Aさんは話がうまく、質問への答えもわかりやすいのですが、エピソードを聞いていくと、その中にある行動事実は弱めです。Bさんは話がややわかりにくく、質問の要点を捉えきれていない答えもありますが、エピソードの中にある行動事実は優れています。

あなたが面接官だったら、AさんとBさんのどちらを通しますか?

能力に重みの差がないとすれば、優秀なのはBさんのほうです。ところが、どちらか1人だけを通すとしたら、多くの面接官はAさんを選びます。なぜこのようなことが起こるかというと、理由は2つあります。

ひとつは、人は聞いた話よりも、自分の目で見聞きしたことを信じるからです。エピソードには「話を盛っているのではないか」「本当に本人がやったことなのか」という疑いがどうしても残りますが、目の前で聞いたわかりやすい説明は疑いようがありません。

もうひとつは、話のわかりやすさの正体が論理性、つまり説明力だからです。説明力は相手を納得させる力です。協調性ややり切る力は、本来エピソードの中の行動事実で評価するものですが、説明がわかりやすいと、行動事実が弱くても、Aさんの話のほうがBさんの話より確かなものに聞こえてしまいます。面接は質問と答えの繰り返しですから、納得感のある答えを返し続ける人が優秀に見えてしまいます。

もちろん、Aさんが優秀ではないと言っているわけではなく、話のわかりやすさは入社後にも大いに役立つ力です。ただ、それだけで合否を決めてよいのであれば、最初から評価する能力を1つにすればよいはずです。3つを評価すると決めたのであれば、間接評価の能力も同じように評価すべきですが、面接ではどうしても直接評価に引っ張られてしまいます。

落とし穴② 場の難易度が無視される

2つ目の落とし穴は、エピソードの中身を評価するときに起こります。

パフォーマンスは、何をどこまでやり切ったかという発揮の質だけでなく、それがどれだけ難しい場だったかという場の難易度とかけ合わせて評価すべき、というのが私の持論です。同じ「最後までやり切った」でも、気心の知れた仲間うちの話と、利害の異なる大勢の関係者を巻き込んだ話とでは、示している能力の程度がまったく違います。

場の難易度の考え方は、体操競技の採点を例に、こちらの記事で詳しく解説しています。

しかし多くの面接では、評価基準に発揮の質しか書かれておらず、場の難易度は評価の観点に入っていません。

さらに面接では、どの場の話をするかを応募者が選びます。面接官は、応募者が選んだエピソードの説明だけを頼りに、その場がどれだけ難しかったかを推し量るしかありません。背景を詳しく聞けば手がかりは増えますが、その説明もまた応募者の言葉なので、ここにも落とし穴①の話のうまさが入り込みます。

落とし穴③ 無い袖は振れない

であれば、場の難易度も意識して、難しい場での経験を聞けばよいではないか、と思われるかもしれません。ところが、この試みは多くの場合うまくいきません。応募者が、面接官の期待するような難しい場を経験していないことが多いからです。経験していないエピソードは話せない、まさに無い袖は振れない状態です。

面接で話すエピソードは、応募者が選びます。評価の材料になる場の難易度を、人事がコントロールできないのです。面接が構造として抱えている課題は、ここにあります。

さらに、場の難易度だけでなく、評価したい能力を発揮した経験そのものがエピソードに含まれていないこともあります。たとえば、研究室で一人で研究を進めてきた理系の学生に、チームで協調性を発揮した経験を聞いても、話せるエピソードが出てこないことがあります。

能力評価には、憶測で評価しないという原則があります。この原則に従うなら、期待する場での経験がない応募者には、相応の低い評価をつけるしかありません。ただ実際には、経験がないだけで、やってみればできる人も大いにいるはずです。その可能性を確かめる手段が、面接の間接評価にはありません。

エピソードの選択権が応募者にあることは、別の問題も生みます。応募者は評価されることを知っているので、やり切れなかった経験は話しません。面接官の前に並ぶのは、「困難があったけれど、工夫して、周りと協力して、なんとか最後までやり切った」という形の話ばかりです。面接官を経験した方なら、やり切る力の評価に差をつけにくいと感じたことがあるのではないでしょうか。

3つの落とし穴は連鎖する

3つの落とし穴は、別々に起きるわけではありません。面接の現場では、次のような順番でつながって起きています。

エピソードで能力を聞くと 落とし穴② 場の難易度を 無視した評価 「何をしたか」だけを見る 難易度を意識しようとしても 落とし穴③ ふさわしい エピソードがない 話を選ぶのは応募者 決め手がないなかで 落とし穴① 結局、直接評価に 偏ってしまう 説明のうまい人が通る どれも面接官の技量ではなく、面接という場の構造から生まれる
図1 3つの誤認の落とし穴は連鎖する

過去のエピソードで能力を評価しようとしても、場の難易度が無視された評価になります(落とし穴②)。場の難易度を意識しようとすると、今度はふさわしいエピソードを応募者が持っていません(落とし穴③)。そして、どちらにも決め手がないまま、結局は目の前の話のわかりやすさ、つまり直接評価に偏っていきます(落とし穴①)。

面接官は誰も手を抜いていません。それでも、全体としては話のうまい人が通りやすい面接になってしまうので、誤認が起きていることにはなかなか気づけません。

面接官を鍛えても、構造は残る

技量の高い面接官であれば、誤認は減らせるかもしれません。しかし、3つの落とし穴は面接官の技量ではなく、面接という場の成り立ちから生まれています。言葉のやりとりで評価すること、エピソードを応募者が選ぶこと、の2つが変わらない限り、どれだけ経験を積んだ面接官でも同じ落とし穴の上に立つことになります。

面接官を増やせば精度が上がる、という考え方にも注意が必要です。複数の面接官の評価がそろっていると、その評価は正しいように感じます。しかし、3つの落とし穴は面接官全員に同じ向きで働きます。全員が同じように話のうまさに引っ張られれば、誤った評価がきれいにそろうこともあります。たまたま起きたずれ(偶然誤差)ではなく、原因があって起きるずれ(系統誤差)なので、面接官の人数を増やしても消えません。

面接は万能ではない、という前提に立つ

面接は万能ではありません。面接には誤認が起きる余地がそれなりにあるという前提に立つのが、正しいスタンスだと思います。

とはいえ、選考プロセスの中で一度も面接をしないということは、まずありません。面接でなければわからないこともあります。ですので、面接ですべてを判断しようとせず、面接に向かない評価はほかの選考に任せることをおすすめします。見直すときは、次の順番で進めるとよいと思います。

  1. 評価要素ごとに、直接評価と間接評価のどちらで評価するかを決めておく
  2. グループワークやビジネスシミュレーションなどの行動観察を、選考に組み込む
  3. 面接で間接評価する評価要素は、エピソードから行動事実を引き出して評価する行動面接を、面接官が実施できるようにしておく

行動観察であれば、応募者の行動を目の前で見られるので、面接では間接評価になる能力も直接評価できます。面接だけで見極めようとせず、行動観察と組み合わせていけば、落とし穴の影響は小さくなります。

行動観察の考え方と、課題の難易度の決め方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

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