ブリリアントジャークの話です。
「面接の評価は高かったし、仕事もできる。でも、その人の周りがどんどん疲弊していく」。採用と育成の両方にかかわっていると、こうした話を耳にすることがあります。成果を出しているだけに注意しにくく、気づいたときにはチームのほうが崩れかけている、という状況です。
サイバーエージェントは、自社の採用サイトで「能力より人柄」「素直でいい人」を掲げ、カルチャーフィットを重視して採用していると書いています[1]。ブリリアントジャークは、ちょうどその反対側にいる人だと言えます。
では、こうした人はなぜ選考をすり抜けてしまうのか。見極めるにはどうすればよいのか。今回はこの2点を掘り下げてみます。
ブリリアントジャークとダークトライアド
ブリリアントジャークとは、仕事の能力は高いが、周囲に害をなす人を指します。Netflix がカルチャー文書の中で「ブリリアントジャークの居場所はない」と書いたことで、広く知られるようになりました。この言葉は2024年の改訂で文書から消えましたが、いまも「どれほど有能でも、同僚に礼節と敬意をもって接しない人の居場所はない」という趣旨の一文が残っています[2]。
似た文脈でよく出てくるのが、ダークトライアドです。ダークトライアドは、ナルシシズム(自己愛の強さ)、マキャベリアニズム(目的のために他者を操作する傾向)、サイコパシー(共感の乏しさや衝動性)という3つの性格特性をまとめた呼び方です。(いずれも性格の特徴を表す研究上の言葉で、病気の診断名ではありません)
2つの関係を整理しておきます。ブリリアントジャークは、高い能力と害をなすふるまいの「組み合わせ」を指す言葉です。ダークトライアドは、そのうち害の側を、性格の面から説明する枠組みのひとつだと考えるとわかりやすいと思います。
組織への悪影響は、研究で示されている
こうした人が組織に悪影響を及ぼすことは、多くの研究が示すところです。
ダークトライアドについては、245のサンプル、延べ約4万4千人を統合した分析があります。3つの特性はいずれも、ルール違反や同僚への加害といった職場での非生産的な行動と、正の関係にありました[3]。
影響の大きさを具体的に示した研究もあります。11社・約5万8千人の勤務データを使い、ハラスメントや不正などの重大な違反で解雇された人を「有害な人」として分析したものです[4]。それによると、有害な人を1人避けることの価値は、上位1%の優秀な人を1人採ることの価値の、約2倍にあたりました。
| わかったこと | 出典 | |
|---|---|---|
| 非生産的な行動 | ダークトライアドの3つの特性は、いずれも職場での非生産的な行動と正の関係にある | O'Boyle ほか(2012) |
| 避けることの価値 | 有害な人を1人避ける価値は、上位1%の人を1人採る価値の約2倍 | Housman & Minor(2015) |
| 周りへの伝染 | 有害な人の近くで働くと、本人も同じ理由で解雇される確率が上がる | Housman & Minor(2015) |
| 生産性 | 有害な人の生産性は、平均よりむしろ高い | Housman & Minor(2015) |
見落とされがちなのが、表の最後の行です。有害な人は生産性の面ではむしろ平均より高い成果を出しており、そのため組織に残り続け、周りへの影響が広がっていきます。「ブリリアント」の部分が、害を見えにくくしているのです。
面接では、むしろ高く評価されやすい
では、選考で見極められるかというと、これがかなり難しいというのが私の持論です。難しいどころか、面接はこうした人を高く評価しやすい場でもあります。
リーダーシップの研究では、ナルシシズムの高い人は「リーダーとして選ばれやすい」一方で、「リーダーとして成果を出す」こととはほとんど関係がない、という結果が出ています[5]。人前で自信を持って話し、自分を大きく見せる力は、選ばれる場面では強みになります。
模擬面接の実験もあります。応募者役の映像を評価者が見たところ、ナルシシズムの高い応募者が最も好意的に評価され、その有利さは主に自己賞賛の多さから来ていました[6]。さらに、面接官が専門家だと事前に知らされると、ほかの人は自己宣伝を控えたのに、ナルシシズムの高い人はむしろ強めていました。
加えて、害の側に深くかかわる正直さや謙虚さは、外から見えにくい特性です。他者による評価の正確さは、その特性の見えやすさに左右されることがわかっています[7]。そのうえ、正直さや謙虚さの低い人ほど、面接で事実を偽るような自己呈示を使うという研究もあります[8]。
皆さんの会社の面接でも、自信を持って堂々と話す応募者が高く評価されていないでしょうか? 自信がある、よく話す、受け答えが堂々としているといった点は、面接の場で直接目にできるため、評価に強く影響します。面接官が意識していなくても、評価は話のうまさに引っ張られがちです。感じのよい自由な面接は、ブリリアントジャークにとって有利な場になりやすいのです。
ラベルではなく、害につながる行動を見る
見極めの出発点は、「この人はナルシシストか」を判定しようとしないことです。性格のラベルは面接で測れるものではありませんし、仮に測れたとしても、不合格の理由として説明することができません。
見るべきなのは、害につながる行動の事実です。研究で、採用時の予兆として挙がっているものを、行動の言葉に置き換えると次のようになります。
- 成果を自分ひとりのものとして語り、関わった人の貢献に触れない
- うまくいかなかったことを、周りや環境のせいにする
- 根拠を問われても断定を続け、自分の限界や不確かさを認めない
- 相手の立場によって、態度や言葉づかいが変わる
- 自分は特別に扱われるべきだという前提で話す
3つ目の「断定を続ける」は、自信過剰にあたります。先の11社の研究でも、自信過剰は有害な人としての解雇を予測する要因のひとつでした[4]。
確かめ方としては、まず構造化面接と深掘りの質問が挙げられます。エピソードの中に周りの人がどう登場するか、責任をどこに置いているかを、具体的な事実として聞いていきます。
また、グループワークなどの行動観察であれば、周りの人へのふるまいをその場で直接評価できます。さらに、他者の目を借りる方法もあります。他者による評価は、本人の自己申告よりも仕事の成果をよく予測するとされています[7]。性格検査を使うのであれば、ごまかしにくい形式を選ぶのがよいと思います。
逆の落とし穴にも注意が必要です。先の研究では、「ルールは必ず守るべきだ」と強く答えた人のほうが、規則違反での解雇が多いという結果も出ていました[4]。ただし、模範的に答えたこと自体を理由に落とすのは筋が通りません。具体的な事実を確かめるための、深掘りのきっかけにとどめるべきです。
サイバーエージェントの「素直でいい人」も、同じように扱うとよいと思います。面接で受けた「素直でいい人そうだ」という印象で判断するのではなく、それを行動に言い換えて、事実で確かめる必要があります。
能力の評価とは別の物差しで見る
ブリリアントジャークのやっかいな点は能力が高いことで、能力の評価を合計したり平均したりする総合評価では、むしろ上位に来てしまいます。
ですので、害につながる行動は、能力の評価に混ぜて平均させないほうがよいと考えています。他の評価がどれだけ高くても、当てはまれば止める、という別の物差しとして持っておくイメージです。
これには研究上の裏づけもあります。正直さや謙虚さは、職場での非生産的な行動とは強く関係する一方で、仕事の成果そのものとの関係は弱いことがわかっています[9]。低いと害を予測するが、高くても活躍を予測するわけではない。こうした性質のものは、段階で細かく評価するよりも、下限の条件として見るほうが合っています。
採りたくない行動を言葉にする
ブリリアントジャークが組織に与える損失は大きく、しかも面接ではむしろ高く評価されやすい存在です。ですので、性格のラベルではなく害につながる行動の事実を、能力の評価とは別の物差しで確かめる必要があります。
自社で取り組むとすれば、まずは「採りたくない行動」を具体的な言葉にするところからだと思います。そのうえで、それを確かめる質問と観察する場面を決め、総合評価とは別に、当てはまったら止める条件として持っておく。この順番で進めていけば、面接官の印象に頼らずに見極められる部分は確実に増えていきます。
SPADE ではどうしているか(公開準備中)
選考設計クラウド「SPADE」の標準要素には、ダークトライアドもブリリアントジャークも、評価要素としては入れていません。理由は3つあります。
1つ目は、中身が他の要素と重なることです。ダークトライアドの3つの特性に共通する核は、正直さや謙虚さの低さとほぼ重なることが知られています。SPADE は「誠実さ」と「謙虚さ」を評価要素として持っており、害につながる行動はそこで確かめるようにしています。
2つ目は、ラベルでは不合格の理由を説明できないことです。「ナルシシズムが高いと判断した」では、応募者にも社内にも説明がつきません。「他者の貢献を認めない言動が、複数の場面で確認された」であれば、行動の事実として説明できます。
3つ目は、ブリリアントジャークが「高い能力 × 害」の組み合わせの現象だからです。能力の側は、他の評価要素がすでに評価しています。
そこで SPADE では、誠実さ・謙虚さ・礼儀・意欲の4つを、段階で評価するのではなく「不合格条件」として持たせています。当てはまれば、総合評価にかかわらず不合格になり、当てはまらなければ総合評価には影響しません。この仕組みそのものが、能力の高さに隠れた害を捕まえる役割を果たします。
なお、「ルールは必ず守る」といった過剰に模範的な答えは、不合格条件にはしていません。面接官向けの案内の中で、具体的な事実を確かめるための深掘りのきっかけとして扱っています。詳しくは、SPADE のご案内をご覧ください。
参考文献
- 株式会社サイバーエージェント(2026).採用サイト「お知らせ」2026年6月26日. ↩
- Netflix.Netflix Culture Memo(2026年10月30日閲覧).「brilliant jerks」の語は2009年の資料から2023年頃まで掲載されていた. ↩
- O'Boyle, E. H., Forsyth, D. R., Banks, G. C., & McDaniel, M. A.(2012).A meta-analysis of the Dark Triad and work behavior: A social exchange perspective.Journal of Applied Psychology, 97(3), 557–579. ↩
- Housman, M., & Minor, D.(2015).Toxic workers.Harvard Business School Working Paper 16-057. ↩
- Grijalva, E., Harms, P. D., Newman, D. A., Gaddis, B. H., & Fraley, R. C.(2015).Narcissism and leadership: A meta-analytic review of linear and nonlinear relationships.Personnel Psychology, 68(1), 1–47. ↩
- Paulhus, D. L., Westlake, B. G., Calvez, S. S., & Harms, P. D.(2013).Self-presentation style in job interviews: The role of personality and culture.Journal of Applied Social Psychology, 43(10), 2042–2059. ↩
- Connelly, B. S., & Ones, D. S.(2010).An other perspective on personality: Meta-analytic integration of observers' accuracy and predictive validity.Psychological Bulletin, 136(6), 1092–1122. ↩
- Bourdage, J. S., Roulin, N., & Tarraf, R.(2018)."I (might be) just that good": Honest and deceptive impression management in employment interviews.Personnel Psychology, 71(4), 597–632. ↩
- Lee, Y., Berry, C. M., & Gonzalez-Mulé, E.(2019).The importance of being humble: A meta-analysis and incremental validity analysis of the relationship between honesty-humility and job performance.Journal of Applied Psychology, 104(12), 1535–1546. ↩



