行動面接の話です。
お客様の採用担当者から、「協調性を評価できる質問はありますか」と聞かれることがあります。協調性に限らず、主体性やリーダーシップのような特定の能力について、それを見抜ける決め手の質問がどこかにあるのではないか、と考えている方は少なくありません。
先にお答えしておくと、そうした質問はありません。私がお伝えしているのは、どの能力を評価するときにも共通する、応募者のエピソードの掘り下げ方です。この記事では、その土台になる「3点モデル」と「深掘り質問」を、新卒採用の面接の例で説明します。
行動面接とは
主体性や周りを巻き込む力、粘り強さといった行動特性は、面接の場で目に見えるものではありません。そのため面接では、応募者が話すエピソードの中から行動事実を抽出して、間接評価することになります。行動面接は、この間接評価を確かなものにするための面接です。
行動面接は「コンピテンシー面接」とも呼ばれ、2つはほぼ同じものを指します。一方で、構造化面接と同じ意味で使われることもありますが、こちらは別のものです。行動面接と構造化面接の違いと、面接の構造化をどこまで進めればよいかは、こちらの記事で詳しく解説しています。
質問ひとつで、能力は見抜けない
面接の経験を少し積むと、「応募者の本質を見抜く質問」といった質問集が気になってくるかもしれません。毎回同じことを聞いていては、応募者が準備してきた答えしか聞けないのではないか、と感じる面接官もいると思います。
しかし、間接評価に関していえば、質問ひとつで能力を見抜くことはできません。もしそんな質問があるなら、その質問を全員にすれば済むので、面接はずっと簡単なものになっているはずです。実際の面接では、応募者の回答に合わせて、次に何を聞くかを変えていく必要があります。
ですので、最初の質問は「これまでで最もがんばった経験を教えてください」で構いません。新卒採用であれば、いわゆるガクチカです。大事なのは最初の質問ではなく、応募者の回答をどのように掘り下げていくかです。あなたの会社の面接官は、最初の回答を聞いたあと、2つ目の質問で何を聞いているでしょうか。
エピソードは、背景・行動・結果の3点で捉える
応募者のエピソードを聞くときの枠組みとして、STAR法がよく紹介されます。エピソードを Situation(状況)、Task(課題)、Action(行動)、Result(結果)の4つに分けて捉える方法です。行動事実に目を向けやすくなるので、エピソードを整理するには役立ちます。
面接でSTAR法を使っても、もちろん構いません。ただ、実際の面接で4つに分けながら聞いている面接官は、あまり見かけません。面接官は、応募者の話を聞き、次の質問を考え、評価のためのメモを取ることを同時にしているので、4つに分ける余裕まではなかなか残りません。
また、評価という点で見ると、状況と課題は同じ役割を果たします。どちらも、その場がどれだけ難しかったか(場の難易度)を判断する材料です。役割が同じものを、余裕のない面接の最中に2つに分けて聞く意味はあまりありません。
そこで私がおすすめしているのが、状況と課題をまとめて「背景」とし、背景・行動・結果の3点でエピソードを捉える「3点モデル」です。3点でもエピソードの組み立ては捉えきれるので、1つ減らしても評価には困りません。4つと3つの違いは小さく見えますが、私自身、面接の場で使ってみて、3つのほうがずっと簡単で、これで事足りると感じています。
応募者のエピソードは、どれも「何らかの背景や課題、目的があり、そのために本人が行動し、結果としてこうなった」という形をしています。この形をそのまま図にしたのが3点モデルです。背景から結果へ向かう流れに、本人の行動が差し込まれています。
3点モデルを頭に入れておくと、応募者がいまエピソードのどの部分を話しているのかが、自然とわかるようになります。この理解が、後で説明する深掘り質問の土台になります。
3点と回答全体には、それぞれ評価の中での役割があります。
- 背景は、エピソードを理解するための前提で、その場がどれだけ難しかったか(場の難易度)を判断する材料になります
- 行動は、評価の根拠です。応募者自身がとった行動事実を評価基準に照らして、行動の質を間接評価します
- 結果は、エピソードに自然と付いてくる情報です。本人の行動だけによるものとは限らないので、結果だけでは評価しないようにします
- 回答全体からは、話のわかりやすさなどを直接評価することもできます
反対に、結果がうまくいかなかったからといって、それだけで低い評価にもなりません。評価は、行動事実と場の難易度で決めます。
最初に、背景を確かめる
ここからは、新卒採用の面接の例で進め方を見ていきます。最初の質問に、応募者が次のように答えたとします。
これまでで最もがんばった経験を教えてください。
はい、私は大学1年生のときから、駅前のカフェでアルバイトをしています。スタッフは15人ほどで、昼のピークには2時間で100人以上のお客様が来店します。2年目になったころ、新人スタッフが半年もたたずに辞めてしまうことが続いていて、店長も頭を抱えていました。そこで私は、新人の教え方を見直すことに取り組みました。その結果、その年に入った新人は、全員が半年後も働き続けてくれています。
この回答を、3点モデルで区分けしてみます。
背景私は大学1年生のときから、駅前のカフェでアルバイトをしています。スタッフは15人ほどで、昼のピークには2時間で100人以上のお客様が来店します。2年目になったころ、新人スタッフが半年もたたずに辞めてしまうことが続いていて、店長も頭を抱えていました。行動事実そこで私は、新人の教え方を見直すことに取り組みました。結果その結果、その年に入った新人は、全員が半年後も働き続けてくれています。
背景は「新人が半年もたたずに辞めてしまう店」、行動は「新人の教え方を見直した」、結果は「新人が全員続いている」です。最初の回答は、このように背景の説明が大半で、行動はひとことしか出てこないのが普通です。
背景がつかめないときは、まず背景を確かめます。何人の新人が辞めていたのか、本人はどういう立場だったのか、といったことです。ただし、行動を掘り下げていくうちに背景の輪郭が見えてくることもあるので、最初にすべて聞き出す必要はありません。
背景を聞いた段階で、仲間うちだけで完結する話や、誰とも利害がぶつからない話のように、場の難易度があまりにも低いと感じることもあります。その場合は、「ほかに用意してきたエピソードはありますか」と聞いて、別のエピソードに替えてもらってよいと思います。面接の最初に、用意してきたエピソードの概要を2つか3つ話してもらっておく方法もあります。
場の難易度の考え方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
深掘り質問で、行動事実を具体化する
背景がつかめて、場の難易度にも問題がなければ、行動を掘り下げていきます。
難しく考える必要はありません。先ほどの例なら、応募者が話した「教え方を見直した」をそのまま取り出して聞けば十分です。
新人の教え方を見直したとおっしゃいましたが、具体的に何をしたのか、詳しく教えてください。
まず、辞めてしまった新人の何人かに連絡をとって、何が大変だったかを聞きました。すると、先輩によって教えることが違い、何が正しいのかわからなかったという声が多くありました。そこで、レジとドリンクづくりの手順を1枚の紙にまとめて、先輩たちに確認してもらいました。
辞めた新人に話を聞いたこと、手順を紙にまとめたこと、先輩たちに確認してもらったことと、行動事実が3つ出てきました。この中から気になったものを取り出して、また詳しく聞きます。
先輩たちに確認してもらったとおっしゃいましたが、どのように確認してもらったのですか。
シフトが重なる日に、先輩一人ひとりに紙を見せて、ふだんの手順と違うところに赤ペンで書き込んでもらいました。5年目の佐藤さんは、最初は「マニュアルなんて要らない」と言っていたのですが、昼のピークに新人がどこで手が止まるかを一緒に見てもらったら、いちばん多く書き込んでくれました。
深掘り質問は、この繰り返しです。最初は「教え方を見直した」というひとことだったものが、2回聞いただけで、誰に、何を、どのように働きかけたのかがわかるところまで具体化できました。ひとつの流れを聞き終えたら、「最初に、辞めた新人に連絡をとったとおっしゃいましたが」と、同じエピソードの別の行動に戻って、また掘り下げていきます。
取材するように聞く
深掘り質問を重ねるときは、応募者のエピソードを取材して、雑誌の記事にするつもりで聞くとうまくいきます。具体化が進むほど、人の名前や場所といった固有名詞が増えていきます。先ほどの例でも、2回目の回答で「佐藤さん」が出てきました。固有名詞が多く出てくるのは、応募者が当時の場面を思い出しながら話している目安になります。
応募者の中には、「要するに、私は周りを巻き込んで課題を解決しました」のように、自分の行動をまとめて話すほうが伝わると考えている方がいます。まとめた話は筋が通って聞こえますが、面接官が評価に使えるのは、まとめる前の具体的な行動事実です。取材するように聞くのは、まずこの具体的な事実を聞き出すためです。
聞き方で差が出るのが、「なぜ」の扱いです。同じ行動について聞くときも、理由を聞くか、したことを聞くかで、返ってくるものが変わります。
| 応募者がすること | 返ってくるもの | |
|---|---|---|
| 「なぜ、辞めた新人に連絡しようと思ったのですか」 | その場で考えて話す | 理由の説明(あとから組み立てたものも混ざる) |
| 「辞めた新人には、どのように連絡をとったのですか」 | 当時を思い出して話す | そのときの行動事実 |
意図を尋ねると、応募者はその場で考えて答えますが、それらしい理由はいくらでも話せるので、実際にどう動いたかはわかりません。深掘りのやりとりでは、応募者に考えて話してもらうのではなく、思い出して話してもらうようにします。
取材するように聞く理由は、もうひとつあります。応募者が話を盛っていないかを見分けるためです。面接では、誇張や、チームの成果を自分ひとりの成果のように話すといったことが、悪気なく起こります。思い出して話してもらう質問を重ねると、本人が実際にやったことと、チームとしてやったことの境目が見えてきます。完全に見破ることは難しいですが、深掘り質問は有効な手立てのひとつだと私は考えています。
能力ごとの質問は、要らない
取材するように深掘り質問を重ねていけば、ほとんどの行動事実は集まります。先ほどの例でも、協調性を名指しで聞いたわけではありませんが、反対していた先輩を巻き込んでいく行動事実が出てきました。ですので、特定の評価要素に絞った質問は、基本的には必要ありません。
むしろ、「そのとき周りの人とどのように協力したのですか」と名指しで聞くと、応募者は面接官が聞きたい答えを察して、望ましい答えをその場で考えて話しがちです。これでは、表1の「なぜ」と同じように、行動事実ではなく、その場で考えた話が返ってきやすくなります。
とはいえ、行動事実が集まらないこともあります。個人で取り組んだ活動のエピソードからは、チームの中でどう動いたかを聞き出すことはできないので、その場合は別のエピソードに替えてもらいます。それでも出てこなければ、その能力を発揮した経験がないものとして、低めの評価をつけます。面接の間接評価の限界です。ここは割り切るしかありません。
経験のない応募者を面接で評価しきれないことは、面接の誤認の落とし穴のひとつとして、こちらの記事で詳しく解説しています。
集めた事実を、評価基準に照らす
行動事実が集まったら、評価基準と照らし合わせて評価します。
ひとつのエピソードで評価に使える事実が出尽くしたと感じたら、時間の許す限り、別のエピソードでも同じように聞いていきます。別の場面でも同じ行動が出てくれば、その行動が入社後にも再現される見込みは高まります。
別のエピソードについては、新卒採用で「高校生のときのエピソードでも有効ですか」と聞かれることがあります。中途採用なら「前々職の話でもよいか」です。何年前までなら有効、という決まりはありません。過去の行動事実から入社後の再現性を見るのが行動面接の考え方なので、大学の4年間があるのに高校時代の話が出てくるなら、大学ではどうだったのかが気になる、というくらいに受け止めればよいと思います。
集めた事実が評価基準の複数のレベルにまたがるときは、基本的には上のレベルで評価して構いません。一度でもできたことは、その人ができることだと考えます。ただし、周りの手厚い支えがあってできたことなど、事情がはっきりしているときは、それも考えに入れます。
背景から読み取った場の難易度も、評価表に書き添えておきます。あとで面接官同士で評価をすり合わせるときに、行動事実と並べて見られるようにしておくためです。
3点モデルと深掘り質問は、振り返りで身につける
面接官トレーニングで、ロールプレイを取り入れたいというご要望をいただくことがあります。ロールプレイは、面接を経験した感覚をつかむには役立ちます。ただ、ロールプレイをして感想を言い合うだけでは、面接の技量はあまり上がらないと私は考えています。
技量を上げるのに要るのは、3点モデルと深掘り質問を意識して面接をし、それがどこまでできていたかを振り返ることです。いまの質問は行動事実を抽出できていたか、背景を聞きすぎていなかったか、といった点です。この振り返りは、ロールプレイでなくても、面接のやりとりを紙に書き起こして読み返すだけでもできます。
質問集を増やすより、ひとつの回答からどう聞き返したかを振り返るほうが、面接官の技量は確実に上がると思います。
選考設計クラウド「SPADE」(公開準備中)
SPADE の面接設計書の章「質問スキル」では、3点モデルでのエピソードの捉え方と深掘り質問の進め方を、新卒と中途それぞれの会話の例で示しています。面接官が設計書を読みながら、自分の聞き方を確かめられるようにするためです。詳しくは、SPADE のご案内をご覧ください。






