面接の構造化の話です。

構造化面接という言葉は、ここ数年で採用の現場にずいぶん広まりました。それにつれて、「構造化面接を取り入れたいが、全員に同じ質問をするなんて、実際には無理ではないか」という声もよく耳にするようになりました。実際の面接で、全員に同じ質問ができていますか?

私も、全員にまったく同じ質問をするのは無理だと思います。

ただ、全員に同じ質問ができないからといって、構造化をあきらめる必要はありません。この記事では、構造化面接の研究をもとに、面接の構造化はどこまで可能なのか、そしてどこまでを目指せばよいのかを考えます。

構造化面接とは

特に新卒採用では、構造化面接と行動面接が混同されていることがあります。2つは別のもので、構造化面接は面接の組み立ての話、行動面接は評価の材料の話です。

構造化面接が勧められるのは、入社後のパフォーマンスをよく予見できるからです。選考の研究では、選考での評価と入社後の仕事ぶりがどれだけ一致するかを「妥当性」という数字で表します。0なら予見がまったく当たっておらず、1に近いほどよく当たっていることを示します。

選考手法の妥当性を推定し直した Sackett ら(2022)の研究では、構造化面接の妥当性は .42 で、比べられた選考手法の中で最も高い値でした[1]。非構造化面接は .19 なので、同じ面接でも、構造化するかどうかで、妥当性は倍以上の差になります。

全員に同じ質問をするのは、現実的ではない

ところが、この定義をそのまま実際の面接に当てはめようとすると、すぐに壁にぶつかります。

最初の質問は用意できます。「学生時代に力を入れたこと」でも「これまでの仕事でいちばん難しかった場面」でも、全員に同じ問いを投げることはできます。難しいのはその先です。応募者が話すエピソードは一人ひとり違うので、行動事実を確かめようと聞き返すたびに、次の質問は、その人がいま話した内容で決まっていきます。

『日本の人事部 人事白書2023』では、「面接の大まかな流れ・進め方が決まっている」と答えた企業が90.6%だったのに対し、「応募者への質問が決まっている」と答えた企業は27.2%にとどまっています[2]。流れは決められても、質問までは決めきれない企業が多いということです。

では、質問をそろえられない面接は、構造化面接とは呼べないのでしょうか。

構造化には「度合い」がある

「構造化面接」という言葉は解釈の幅が広く、人によって指しているものが違うため、議論がかみ合わない場面をこれまで何度か見てきました。よくあるのが、「構造化されている」か「されていない」かの二択で考えてしまうことです。しかし研究では、構造化には度合いがあると考えられています。

Huffcutt と Arthur(1994)は、面接の構造化を「面接官にどれだけ裁量が残っているか」で捉え、2つの軸で整理しました[3]。どこまで同じ質問をするかという質問の標準化と、どこまで同じ物差しで評価するかという評価の標準化です。この2つの組み合わせで、面接を4つのレベルに分けています。

また、構造化は質問だけの話ではありません。評価基準を定めて同じ物差しで評価すること、面接官をトレーニングすること、回答を記録して比べることも、構造化の一部です。Campion ら(1997)は、こうした構造化の要素を15個に整理しています[4]。「構造化とは質問をそろえること」と考えていると、質問以外のところで構造化できる余地を見落としてしまいます。

評価をそろえるのも、思ったより難しいものです。0.5刻みで評価すると決めていても、紙の評価表に「2.3」と書く面接官は少なくありません。評価基準に照らすのではなく、前の応募者と比べて順位をつけているためです。

構造化の天井効果

4つのレベルの妥当性を並べたのが、図1です。

ここから先は、ほとんど上がらない .20 .35 .56 .57 レベル1 自由に質問し 全体の印象で評価 レベル2 質問の枠や 評価の尺度を決める レベル3 質問と評価をそろえ 追加の質問はできる レベル4 同じ質問だけで 追加の質問をしない 構造化の度合い(右へ行くほど面接官の裁量が小さい)
図1 構造化の度合いと妥当性(Huffcutt & Arthur, 1994 をもとに作図)

自由に質問して全体の印象で評価するレベル1の妥当性は .20 で、質問の枠や評価の尺度を決めるレベル2では .35、質問も評価もそろえるレベル3では .56 と、構造化の度合いを上げるほど妥当性は上がっていきます。

ところが、まったく同じ質問だけをして追加の質問をしないレベル4は .57 で、レベル3からほとんど上がっていないと報告されています(補正の仕方が違うので、先ほどの .42 とは直接比べられません)。

研究からわかるのは、構造化には天井がある、というところまでです。どこで止めるかは判断になりますが、構造化はレベル3まで進めれば十分というのが私の持論です。全員にまったく同じ質問だけをする面接にしても、精度の上積みはほとんどなく、そのうえ応募者に合わせて行動事実を確かめる手立てを手放すことになります。

追加の質問は、構造化を崩すものではない

レベル3とレベル4を分けているのは、応募者に合わせた追加の質問ができるかどうかです。

応募者ごとに違う質問をしたら、それはもう構造化面接ではないのでは、と思われるかもしれません。全員に同じ質問をするのが構造化だとすれば、深掘り質問は構造化を崩すものに見えるからです。

Campion ら(1997)は、面接官が追加の質問で掘り下げることを認めたうえで、それを一貫した手順で、仕事に関係する範囲で行えるよう訓練すべきだとしています[4]。思いつきの質問や雑談は構造化を崩しますが、決まった手順に沿った掘り下げは、構造化の一部として扱われています。

「ある程度の構造化」で決めておくこと

では、実際の面接では、どこまで構造化すればよいのでしょうか。私は、次の3つを決めておくことをおすすめしています。

  1. 評価要素ごとに、評価基準を決めておく
  2. 最初の質問や時間の配分など、面接の大まかな流れを決めておく
  3. エピソードをどのように掘り下げるかの手順を、面接官の間でそろえておく

1と2は、多くの企業ですでに取り組まれていると思います。ただ、中には1の評価基準がないまま、「面接官トレーニングをしてくれませんか」とご依頼をいただくこともあります。評価基準がないままトレーニングをしても、評価は最後にはばらばらになるので、その場合は、まず評価基準の設計から始めることを提案しています。

また、1と2を決めていても、「構造化したつもり」で止まってしまうことには注意が必要です。研究では、構造化面接と呼ばれている面接でも、実際に取り入れられている構造化の要素は一部にとどまることが多いと指摘されています[5]。

そのうえで差がつくのが3です。質問を柔軟にしてよいといっても、掘り下げ方が面接官の数だけあるなら、結局は面接官が自由に質問しているのと同じことになります。

掘り下げの手順の土台になるのが、応募者のエピソードを背景・行動・結果の3点で捉える「3点モデル」と、行動事実を具体化していく「深掘り質問」です。面接官がこの2つを身につければ、応募者ごとに違う質問をしながら、同じ手順で行動事実を集められるようになります。

行動面接の進め方と、3点モデル・深掘り質問は、こちらの記事で詳しく解説しています。

構造化の限界と、最初の一歩

面接の精度を上げる手立てとして、研究で最も裏づけがあるのが構造化です。とはいえ、構造化しても、面接そのものが抱える誤認の落とし穴は残ります。その落とし穴は、こちらの記事で詳しく解説しています。

全員に同じ質問をそろえることにこだわるより、まずは面接官ごとの掘り下げ方を並べて比べてみることをおすすめします。同じエピソードを聞いても、何を聞き返すかは面接官によってかなり違うはずです。そこをそろえることが、面接の構造化のいちばん現実的な一歩だと思います。

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参考文献

  1. Sackett, P. R., Zhang, C., Berry, C. M., & Lievens, F.(2022).Revisiting meta-analytic estimates of validity in personnel selection: Addressing systematic overcorrection for restriction of range. Journal of Applied Psychology, 107(11), 2040–2068. ↩
  2. 株式会社HRビジョン(2023).『日本の人事部 人事白書2023』. ↩
  3. Huffcutt, A. I., & Arthur, W., Jr.(1994).Hunter and Hunter (1984) revisited: Interview validity for entry-level jobs. Journal of Applied Psychology, 79(2), 184–190. ↩
  4. Campion, M. A., Palmer, D. K., & Campion, J. E.(1997).A review of structure in the selection interview. Personnel Psychology, 50(3), 655–702. ↩
  5. Levashina, J., Hartwell, C. J., Morgeson, F. P., & Campion, M. A.(2014).The structured employment interview: Narrative and quantitative review of the research literature. Personnel Psychology, 67(1), 241–293. ↩