選考設計の仕事では、面接の詳細設計を依頼されることがよくあります。求める人材像や評価要素はすでにあり、それを選考でどのように評価していくかを設計してほしい、というご依頼です。

最初の打ち合わせでは、いま使っている面接評価表や、求める人材像をまとめた資料を見せていただきます。並んでいる評価要素は、どれも入社後の活躍に必要なものばかりで、選ばれた理由もよく考えられています。ところが、一つひとつを実際の選考の場面に置き換えてみると、これは面接で評価できるだろうか、と手が止まる要素が、たいていいくつか含まれています。

そのとき、私が確かめているのが評価可能性です。

評価可能性とは

評価要素を選ぶときの観点としては、変動性がよく知られています。入社後の育成で伸ばしやすい能力は選考で厳しく見なくてもよく、伸ばしにくい能力こそ選考で評価しておくべきだ、という考え方で、採用の現場ではもう当たり前の観点になっています。

評価可能性は、それとは別の観点です。活躍に必要か、育成で伸ばせるかを確かめても、選考の場で評価できるかどうかを確かめたことにはなりません。

評価要素は、据え置きになりやすい

それなら評価要素を見直せばよい、と思われるかもしれません。しかし、求める人材像や評価要素は、会社として簡単に変えられるものではありません。経営の考えを反映したものなので、変えるには役員の承認が必要になることもあります。

また、求める人材像や評価要素は、コンサルティングファームに多額の費用を払って設計してもらっていることも少なくありません。経営層の考えを丁寧に聞き取ってまとめたものなので、活躍に必要かどうかという点では、異論をはさむ余地がほとんどありません。

ですので、多くの場合、評価要素は据え置きのまま、選考の側でどう評価するかを考えることになります。

選考で評価しにくい能力は、少なくない

評価しにくい能力は、ひとつではありません。ここでは、私が面接の詳細設計で特によく出会うものを3つ挙げますが、これで全部というわけではありません。創造性や自律性のように、同じように評価が難しい能力はほかにもあります。

持続性が求められる能力

完遂ややり切る力のように、時間をかけて発揮される能力です。この能力を、面接の30分や1時間で評価できると思いますか?

面接では、過去のエピソードから間接評価することになりますが、完遂について聞くと、ほとんどの応募者が最後までやり切った話を持ってきます。差がつくとしても、その差の多くは話の組み立ての差です。面接官は能力の差を見ているつもりで、実際には話のうまさを見ていることになります。このしくみは、こちらの記事で詳しく解説しています。

では行動観察ならよいかというと、30〜45分程度のグループワークでは、やり切るかどうかを見届けるには短すぎます。短い時間の中では、誰でも最後まで取り組めてしまうからです。行動観察なら何でもよいわけではなく、時間と課題の組み方しだいです。

発揮が状況に埋め込まれている能力

柔軟性や状況把握のように、ある状況に置かれたときに初めて発揮される能力です。前提が変わった、相手の様子が変わった、といった状況とセットでなければ、能力が発揮されたかどうかを判断できません。

面接でこの能力を評価しようとすると、応募者がどのような状況に置かれ、それをどう受け止め、どう対応したのかを、状況ごと聞き出す必要があります。応募者の話だけを材料に、状況の読み取りまで含めて評価するのは、かなり難しいと思います。

一方、行動観察であれば、途中で前提が変わる場面のように、評価したい能力が発揮される状況をあらかじめ組み込んでおけるので、その場で応募者がどう動いたかを直接評価できます。

何をもって学んだとするかが難しい能力

学び続ける力や学習意欲のように、何をもって学んだと判断するのかが難しい能力です。私は、この種の能力は、どのような選考でも評価がかなり難しいと考えています。正直に言えば、決め手はありません。

口頭試問のように、学んだ中身を説明してもらって理解度を問うことはできますが、ある時点での理解度が、入社後も学び続ける力に当たるかどうかには疑問が残ります。行動観察でも、数時間の中で、学び続けるかどうかまでは見えません。

ここまでの3つを、面接と行動観察に分けて並べると、次のようになります。

表1 選考で評価しにくい能力の例
面接行動観察
完遂・やり切る力やり切った経験しか話されないので、差がつきにくい30〜45分程度では、やり切るかどうかまで見届けにくい
柔軟性・状況把握発揮した状況ごと聞き出す必要があり、かなり難しい状況を組み込んだ場をつくれば、直接評価できる
学び続ける力・学習意欲理解度は問えるが、学び続ける力とは別物数時間でも、学び続けるかどうかは見えない

評価できない評価要素は、片手落ち

活躍との関係がどれだけはっきりしていても、評価可能性を考えずに選んだ評価要素は片手落ちだ、というのが私の持論です。

評価できない評価要素があると、2つのことが起こります。ひとつは、評価に差がつかず、合否に影響しない要素になることで、評価表の欄は埋まっていても、その要素があってもなくても選考の結果は変わりません。

もうひとつは、先ほどの完遂の例のように、面接官が別のものを評価してしまうことです。話のうまさで差がつくと、評価要素の名前とは違う能力で合否が決まります。こちらのほうが、評価の誤認が起きているぶん、影響は大きいと思います。

評価可能性は、評価要素を決める段階で考える

いまの評価要素を変えられなくても、いずれ見直す機会は来るので、そのときのために本来の順番を書いておきます。

評価要素は、求める人材像をもとにつくります。その際、入社後の育成で十分に身につけられる能力は、選考の時点では評価する必要がないので、評価要素から外します。

評価可能性も、この段階で一緒に考えるのが本来の順番です。選考の場で評価できる能力か、評価するならどの評価手法が向いているかを、評価要素を決めるときに確かめておきます。評価できないと判断した能力は、外すか、重みを下げて残すかを決めます。外すなら、入社後にどう育てるかまで決めておくのが筋です。

部分ではなく、一貫した設計思想でつくる

選考設計には、いくつもの工程があります。

  1. 求める人材像
  2. 評価要素
  3. 選考プロセス
  4. 評価要素と選考プロセスのマッピング
  5. 評価基準
  6. 各選考の詳細設計

これらを一貫した設計思想でつくることが、私のおすすめです。工程ごとに別々に設計すると、それぞれの工程の中では最適になっても、選考全体としては最適になりません。評価可能性の問題は、その典型です。

求める人材像と評価要素は活躍の観点で、選考プロセスは日程や運用の観点で、詳細設計は面接の進め方の観点で、それぞれ別々に決められていることがよくあります。どの工程にも理由はありますが、選考で評価できるかどうかを、工程をまたいで見ている人がいません。

選考設計の全体像は、こちらの記事で詳しく解説しています。

据え置きの評価要素で、選考を設計するとき

評価要素を変えられないときでも、選考の側でできることはあります。まず、選考プロセスに行動観察が入っていなければ、行動観察を入れることを検討してください。表1の柔軟性や状況把握のように、面接では話を聞くしかない能力も、場のつくり方しだいで、行動観察なら評価できます。

行動観察を入れるときは、何を評価したいかをもとに、時間や内容を設計します。完遂を評価したいなら、やり切るかどうかが見えるだけの時間をとり、途中で投げ出したくなるような負荷を課題の中に置きます。柔軟性や状況把握を評価したいなら、途中で前提が変わる場面や、状況を読み取らないと進めない設定を組み込みます。

グループワークを入れること自体が目的になると、30〜45分程度のありふれた課題になりがちで、それでは面接で評価しにくかった能力は、行動観察でもやはり評価できません。

学び続ける力のように、どの評価手法でも評価が難しい要素は、評価の重みを軽くしておくのがよいと思います。面接で聞くなら、学びたいという意欲の言葉ではなく、過去に自分から学んだ行動事実を聞き、その話が本当かを確かめるために、学んだ中身を少し説明してもらいます。それでも、この要素だけで合否が決まるような配点にはしません。

行動観察の課題の難易度の考え方は、こちらの記事で詳しく解説しています。

選考設計クラウド「SPADE」(公開準備中)

SPADE は、評価要素を選ぶところから、どの選考でどの評価要素を評価するかのマッピングまでを、ひとつの流れで設計できる選考設計クラウドです。

有料プランでは、マッピングを決める画面で、評価要素ごとに、面接と行動観察のどちらで評価しやすいかの目安を示しています。評価しにくい組み合わせに、設計の段階で気づけるようにするためです。また、観察できる評価要素ごとに選べる行動観察プログラムも用意しています。詳しくは、SPADE のご案内をご覧ください。