採用の見極めの誤りが、なぜ放置されるのかという話です。

見極めの誤りが合否の境目で起きると、本来合格とすべき人が落ち、本来不合格とすべき人が通ってしまいます。これが、私が「合否の入れ替わり」と呼んでいるものです。入れ替わりを増やしたいと考えている採用担当者は、まずいないと思います。誰もが減らしたいと考えているはずです。

それでも、選考の見直しは多くの企業で後回しになっています。理由をひとつに絞るなら、選考は答え合わせができないから、というのが私の持論です。

選考は予見なのに、答え合わせができない

選考の目的のひとつを、私は「入社後のパフォーマンスの予見」という言葉で説明しています。

予見である以上、本来は当たったかどうかを確かめ、外れた理由を調べて、次の予見に生かしていくものです。選考時の評価と入社後の活躍を突き合わせ、予見が当たっていたかを確かめる。この記事では、これを「答え合わせ」と呼びます。

ところが、選考ではこの答え合わせがほとんどできません。正誤のはっきりしたテストなら、解き終えたあとに答え合わせをして、間違えたところを見直せます。選考はむしろ、採点する人の判断が入る論述式の試験に近いものです。しかも答案を出してから点数が返ってくるまでに何年もかかり、返ってきた点数が答案の出来によるものなのか、採点した人の見方によるものなのかもわかりません。

選考で答え合わせができない理由は、大きく2つあります。

答え合わせができない理由① 答えが出るのは数年後

新卒採用の場合、答えが出るまでには長い時間がかかります。新卒の社員に活躍を期待する時期を企業に尋ねた調査では、入社3年目以降と答えた企業が約8割(81.9%)にのぼりました[1]。入社してすぐの活躍を求めているわけではないので、予見が当たったかどうかは、早くても3年ほど経たなければわかりません。

その3年の間に、採用の現場は先へ進んでいます。新卒採用では、ある年の入社者を迎えるころには次の年の選考が佳境を迎え、さらに次の年のインターンシップの準備も始まっています。目の前の業務に追われるなかで、3年前の選考を振り返る時間はなかなか取れません。

採用担当者には異動もつきものです。答えが出るころには、選考をした人も、答え合わせをするはずの人も、もうその場にいないことが少なくありません。

答え合わせができない理由② 答えが出ても、選考のせいかわからない

入社後に思うように活躍できない社員がいたとして、その理由は、選考の見立てが誤っていたからかもしれません。あるいは、育成がその人に合っていなかったのかもしれませんし、配属先の環境や、一緒に働く人との関係が影響しているのかもしれません。選考の誤認は、いくつもある理由のひとつにすぎません。

理由を1つに特定できないので、振り返りはなかなか行われません。現場からは「採用でもっと見極めてほしい」という声が上がり、採用の側は「現場の育て方の問題もある」と受け止める。どちらにも一理があるだけに、話は平行線のまま終わりがちです。

活躍した場合も同じです。人は入社後に成長するので、選考時の評価がそれほど高くなかった人が大きく活躍することもあります。それ自体は、とても喜ばしいことです。しかし、その活躍が選考の見立てどおりだったのか、育成や環境が後押ししたのかは、やはり分けられません。

表1 答え合わせができない2つの理由
理由① 答えが出るのは数年後理由② 選考のせいかわからない
起きていること活躍がわかるのは入社3年目以降活躍の理由が、選考・育成・環境・人との関係と混ざる
その結果答えが出たとき、選考をした人がいない振り返りが平行線のまま終わる

答え合わせができないと、経験が見極めの力にならない

面接の経験を積めば、見極めはうまくなっていく。そう思われるかもしれませんが、答え合わせができないことは、面接官一人ひとりの見極めにも影響します。

直観的な判断が経験によって上達するには、判断の結果がすぐに、はっきりと返ってくることが必要だとされています[2]。採用は、結果が返ってくるのが遅く、返ってくる数も少なく、しかも理由があいまいな領域です。面接の経験を積んでも、見立てそのものは上達しにくいのです。

さらに、不合格にした人については、答えそのものが出ません。落とした人が他の会社でどれだけ活躍しても、その事実が自社に伝わることはまずないからです。判断の確かさは合格させた人の活躍だけで測られるので、誤っていたことを示す材料が手に入らず、判断への自信は保たれ続けます[3]。

「面接の経験が長いから見極められる」という感覚は、こうして確かめられないまま強まっていきます(いずれも米国の研究ですが、落とした人の結果が出ないという仕組みは日本の選考でも同じです)。

答え合わせができないものは、目標にならない

組織の側でも、同じことが起きます。ここでは、採用の目標がどのように立てられているかを見てみます。

採用は、企業にとってひとつのプロジェクトです。一般のプロジェクトと同じように、品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery)の3つの観点、いわゆるQCDで目標が立てられ、それが採用担当者のKPI(重要業績評価指標)にもつながっています。採用に当てはめると、次の3つです。

  • Q(品質):求める人数と質の人材を採用する
  • C(コスト):決められた採用コストや、1人あたりの採用単価の範囲内で採用する
  • D(納期):決められた期限までに採用する

このうちCとDは、数字で測れて、結果もすぐに出る指標です。予算を超えたり期限に遅れたりすれば、その場で誰の目にも明らかになるので、採用担当者はこの2つを必ず守ります。Qのうち人数も、100人の目標に対して90人しか採用できなければ未達、とすぐに判断できる指標です。

ところが、Qのもう半分である人材の質だけは、答え合わせができません。質が良かったかどうかがわかるのは、入社して数年が経ってからです。そこで現場では、説明会の満足度や選考の参加率、通過率、内定承諾率といった、すぐに測れる数字を質の代わりに追いかけることになります。ただ、これらは採用活動の進み具合を表す数字で、入社後に活躍したかどうかを表すものではありません。

結果として人材の質はKPIに入らないまま残り、KPIに入っていないものを改善しても、担当者の評価にはつながりません。選考の精度を上げようという動機が、仕組みの上で生まれにくいのです。

これは日本に限った話ではありません。米国の調査でも、採用の質は最も価値のある指標のひとつとされる一方で、それを効果的に測れていると答えたのは33%にとどまりました(2015年の調査)[4]。

目標がすぐに答えの出るものだけで組まれると、選考は「今年も予定どおり回せた」ことで評価されます。選考の精度を上げる努力をしても、その成果は誰にも数えられません。

選考は、設計されないまま回り続ける

個人の自信は下がらず、組織の目標にも入らないとなると、選考は去年と同じ評価表と同じ面接で回り続けます。

これは担当者の怠慢ではありません。答え合わせができない仕事では、去年どおりに回すことが、最も問題の起きにくい選択になるのです。前年踏襲は、この構造から自然に生まれた結果だと私は考えています。

その一方で、前年踏襲が続くと、なぜこの評価要素なのか、なぜこの選考プロセスなのかを誰も説明できなくなり、入れ替わりは減らないまま、誰にも気づかれずに続いていきます。

答え合わせを待たずに、入れ替わりを減らす

では、どうすれば入れ替わりを減らせるでしょうか。

答えが出るのは数年後で、出ても選考のせいかはわからず、落とした人については答えそのものが出ません。あとから直すことができないのであれば、選考の前に、入れ替わる可能性を減らしておくしかありません。これが、選考を設計する理由です。

選考の設計で決めておくのは、何の能力を評価するかと、その能力を正しく評価する方法です。評価要素や評価基準を言葉にし、評価要素ごとに合う評価手法を選んでおくことで、評価の誤認そのものを減らせます。

設計は、答え合わせの土台にもなります。選考時の評価が評価要素ごとに残っていれば、できる範囲で答え合わせができるからです。年次評価や昇進など手元にある指標と突き合わせ、評価の高かった人ほど活躍しているかを見るだけでも、関係の見えない評価要素を外したり、足りない要素を加えたりする根拠になります。

答え合わせは、担当者が替わっても続くように、毎年の業務に組み込んでおくとよいと思います。数年後に答えが出たとき、それを受け取る人と手順が決まっていれば、選考の設計を見直すきっかけになるはずです。

まずは評価を残すところから

入れ替わりが放置されるのは、担当者が怠けているからではなく、選考が答え合わせのしにくい仕事だからです。ですので、答え合わせを待たずに、設計で入れ替わる可能性を減らしておく必要があります。そのうえで、少しずつでも答え合わせができる状態をつくっておくと、設計を見直す根拠が毎年たまっていきます。

まずは、次の3つから始めてみることをおすすめします。

  1. 評価する能力を、評価要素として言葉にする
  2. 評価要素ごとに、評価の方法と評価基準を決める
  3. 選考時の評価を評価要素ごとに残し、年に1回、入社後の活躍と突き合わせる

選考設計クラウド「SPADE」(公開準備中)

選考設計クラウド「SPADE」では、評価要素、選考プロセス、どの選考で何を評価するかのマッピング、評価基準を、ひとつの場所で設計できます。評価要素と評価基準が決まっていれば、選考時の評価を毎年同じ物差しでつけられるので、答え合わせの土台にもなります。詳しくは、SPADE のご案内をご覧ください。

参考文献

  1. マイナビ(2026).2027年卒 企業新卒採用活動調査(2026年7月22日).データ編の「何年後に活躍することを期待するか」の全体の値(3年目・4〜5年目・6〜10年目・11年目以上の合計).2023年卒の調査以降、毎年8割強で推移している. ↩
  2. Kahneman, D., & Klein, G.(2009).Conditions for intuitive expertise: A failure to disagree.American Psychologist, 64(6), 515–526. ↩
  3. Einhorn, H. J., & Hogarth, R. M.(1978).Confidence in judgment: Persistence of the illusion of validity.Psychological Review, 85(5), 395–416. ↩
  4. LinkedIn(2015).Global Recruiting Trends 2016. ↩